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新しい生命が芽吹いた

A new life to sprout



 電車通りから公園の入り口に進むと、そこに原爆ドームがある。
ドームは風雪に耐え、裸の鉄骨をそのままに空にさらしている。

「史上初めての原子爆弾によって破壊された〜残骸である」(「原爆ドーム」碑文)。

いまも被爆した人たちと、それにつながる数え切れない人たちの身と心の苦悩が、
ドームの「残骸」に重なる。

「75年間は草木は生えぬ」といわれた広島に、翌年奇跡的に植物が芽吹いた。
熱線をまともに受けた「アオギリ」の木だった。被爆の混沌の中で虚脱状態にあった
人たちに、生きる力を与えたとされる。
奇跡的に助かった自らを、アオギリの驚異の息吹に重ねて、自分もきっと生きられ
ると〜。極限状態で握りしめていたいのちに、熱い血が流れ始めた。

これに東日本大震災の記憶が重なる。
岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」がそれだ。七万本の松原が津波にのまれ、
ただの一本だけ生き残った松の木に、被災した多くの人たちが、たまたま生き残った
自らのイノチをそこに見た。
松の木はもはや松の木ではなかった。いのちのシンボルとなった。一本松は末永く、
救われた多くのいのちが立ち上がる姿として、いまも原形のママ人々とともにある。

8月、きょうの広島平和公園の緑は、太陽の光を浴びて輝いている。
アオギリが芽吹いて70余年、いまや多様に繁茂した木々の緑が、
原爆ドームを優しく取り囲んでいる。