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   ついに人類は、核と真っ正面から向き合う日を迎えている。
   それは、ヒト科の進化中途から異様に派生した欲望の図であり、地球温暖化と
   ともに、惑星全域に恐怖をもたらしている。
   すみやかに関係国は野蛮な核威嚇をやめ、お互いが顔を見据えた対話への転換
   を図るべきだ。誰が間違っても、核のジェノサイドがもたらす想像を絶する事態に、
   責任を持てる者など一人もいないはずだ。

   それは、70余年前の広島、長崎から始まった。
   その非道を省みることなく、ひたすら核による殺りくを是として狂走する事態ほど、
   人間の尊厳をおとしめるものはないだろう。

記憶の原点は消えない

The roots of the memory cannot be removed




「エノラ・ゲイは衝撃波に揺れた」。

1945年8月6日午前8時15分、ヒロシマ上空は快晴だった。
原爆投下の目印は、上空からT字型に見える元安川に架かる相生橋であった。
人類史上最初の原子爆弾が投下された。

一瞬にして、音速を超える爆風と熱線により、広島は焦土と化した。
人間の眼も鼻も口も耳も、髪の毛も手も足も、胸も背中も、人間の笑い声も
泣き声も、ことばも、一瞬にして巨大な炎に包まれた。
人間の身体は溶解した物体となり、先刻まで存在していた広島の日常とともに
焼却された。

 「エノラ・ゲイはテニアン島の基地に攻撃成功を打電した」。



あれから70余年の日々は、決して消えはしない。
世界からあらゆる核兵器が消え失せても、起きた事実を消し去ることはできない。
「にんげんをかえせ」と刻んだ峠三吉の叫びを消すことは、永遠にできはしない。